04 Malfunction

 どのくらいそうして快楽に耐え続けた頃だっただろうか。お腹の側の、すこし浅いところにあるふくらみを、あたるはトントンと優しくつつき始めた。前立腺をそうして甘く刺激され、面堂はたまらず身をよじる。
「あっやだっ、そこやだ、諸星……っ♡」
「いつもならココ突かれるとすぐイっちゃうもんな、おまえ」
「ひっ、イ……、〜〜〜〜っ♡♡♡」
 今度こそイってしまう、と思ったのに、やはり身体は限界まで上り詰めることはなく、ある一点を境にふっと空気が抜けるように身体から力が抜けていく。
「あ、やっぱりイけないんだな〜、これでも。ほんとに暗示がガッツリ効いとるよ〜だな」
「ふ……ぅ……っ♡♡」
 そのくせ快感だけは強く残ったまま、面堂の心と身体を苛んでくる。瞼の裏がチカチカするような強烈な感覚が抜けなくて、イく直前の気持ちいい感覚のまま放り出され、それが延々と続いていた。
「よし、んじゃ〜もう一回……」
「……ッ!!」
 あたるがまた前立腺にひたりと切っ先を据える。面堂はひくりと喉を引きつらせ、ついにあたるにすがりついた。
「もろぼしっ、諸星…、こんなの、もう無理だ…っ」
「そお? おれの軍門になんか降らないんじゃなかったのか?」
 あたるは前立腺のあるあたりをくりくりと軽く押しながら、薄く微笑みを浮かべて面堂の喉元をくすぐる。
 面堂はぽろっと涙を零しながらあたるを見上げた。
「だ、だっ…て、ッう…、もう、きもちいいのが、ぁ…とまらなくて……っあ、うあ…ッ」
「そ〜だな〜、こうしてちょっと押すだけで……」
 言いながら、あたるがそこをぐっと押し上げる。面堂は泣きながらのけぞった。
「ッや、ぁあああ〜〜…っ♡♡♡」
「そんなえっちな声出ちゃうもんな」
「っふ、ぅう〜……♡♡」
 どこまでいっても気持ちいいのが苦しくて、面堂はぐすぐすとすすり泣く。今だって気持ちよくてたまらないのに、他のことなんてなんにも考えられないくらいなのに、最後のあの一番気持ちいい瞬間だけはずっとおあずけされたまま、延々と我慢させられ続けている。こんなのズルすぎる、と面堂は思った。何度も何度も限界まで気持ちよくさせて、あと一歩のところで絶頂だけはひたすら取り上げ続けるなんて。
 こんなの、がまんなんかできるわけない。 
「じゃあ、こ〜しようか」
 あたるは触れるか触れないかの距離まで唇を近づけて、笑いながら言った。
「いまから十数えるから、ゼロになったら、イってもいいよ」
「へ……」
「いくぞ〜?」
「っち、ちょっと待っ…!」
 腰をぐっと掴まれ焦るが、あたるは面堂を無視してなかを思い切り突き上げる。
「じゅーう」
「んぁああ…っ!?♡」
 びくん、と全身が跳ねる。奥の方の気持ちいいところに先が当たって、普通だったらとっくにイっているような激しい快楽が体を駆け抜けた。
 それだけでも辛いのに、あたるはそこを狙って何度も何度も突き上げ始めた。
「っひ、あっ、あ…!!♡」
「きゅーう」
「も、ろぼしっ、やだ、やめ…っ!」
 必死になって止めようとするが、あたるは面堂の抵抗を難なく抑え込んで、弱いところをさらにぐりぐりと押し込むように刺激してくる。
「ぅあああ……ッ♡♡」
「はーち……」
 もうイく、すぐイく、ぜったいイく……。頭の中ではイく、イく、としきりにその言葉が踊っては面堂を苛む。だが、どんなにイきたくても、あたるの言葉が面堂を縛る限り、イくことはできない。でも、イきたくてイきたくて、のこりのカウントがあまりに遠く永遠に感じられた。
「ぁああ…ッ♡♡ は、はやく…っ♡」
「焦らない焦らない。なーな……」
 あたるはあくまでもゆっくりと数字をかぞえあげ続ける。その間もぐちゅぐちゅといやらしい音を立てながら、ぐっ、ぐっ、と面堂の体の奥深くを突いていった。
「ろーく」
「はぁああ……ッ♡♡」
「ごーお……」
 あたるはそこで口をつぐんだ。そのくせ腰の動きは緩めない。一刻も早くこんなこと終わらせてほしいのに、カウントが停滞したままさらに快感だけが積み重なっていく。面堂はぽろぽろ涙を流しながらあたるの手首をぐっと掴んで注意をひく。
「っく、ん〜〜〜ッ♡♡ もろぼし…っ、はや、く、つづき…っ!」
「うん」
 そう言う割に、あたるはなかなか先を口にしようとしない。
 面堂はたまらず腕であたるの胸を突いた。
「っあ、もろぼし…っはやくしろ…ッ」
「面堂、続きなんだっけ?」
「ふ、ふざけるのもい〜かげんに…ッ」
 こんなときまで面堂をからかいへらへら笑うあたるを涙目で睨みつける。だがその瞬間、ぬるっとあたるのものが奥に滑って面堂の特に弱い場所をズンと突き上げた。
「よん」
「ぁ、ぅあ〜〜〜ッ♡♡♡」
 面堂は背筋を仰け反らせて身体をガクガクと震えさせる。だがもちろん絶頂には届かない。頭の中でしきりに星がチカチカと散って、苦しいほどの快感が体中を満たしている。こんなの気持ちよすぎる、耐えられるわけがない。
「さーん。ほら、あとすこし」
「っふ、ん〜〜…ッ♡♡」
 あたるが励ますように、泣いている面堂の頬を軽く叩いた。もう何が起きているのか、自分がどうなっているのか意識が朦朧としてあいまいになってきている。そのくせ体の感覚だけは針の先のように鋭く鮮明で、あたるが中を突き上げるたびに息が詰まるほどの強い快感が駆け抜けて面堂を圧倒した。 
 面堂は、幼い子供がするように泣きながら首を振った。
「やだ、も、むりっ、こんなのむりぃ……っ♡♡」
「あとすこしだから。面堂家次期当主のおまえならがまんできるだろ?」
 あたるはあくまで優しく、柔らかい声で面堂をなだめる。だが決してカウントを早めたり、今すぐに面堂を解放したりしようとはしない。この男のこういうところが本当に心の底から憎らしくて、できるならすぐにでも手打ちにしてやりたいくらいだった。
 あたるはぐちゅぐちゅと面堂をさらに追い詰めながら、ゆっくりと続きを口にする。
「にーい……」
「ぁ、ふあぁああ……ッ♡♡」
 前立腺のあたりをぬりゅっとこすりあげられ、また頭の中に星がチカチカと眩く散った。
 あとひとつ。あとひとつで、やっと、解放される。もうイくことしか考えられない、はやくイきたくてイきたくてイきたくてイきたくて、気が狂いそうだった。
「さいご。いーーち……」
「あ、い、イく……♡♡」
 あたるは面堂の頬に手を添えて、そっと耳元に唇を寄せ、とびっきりの甘い声でささやいた。
「……ゼロ♡ イっていいよ」
「……〜〜〜っ!!♡♡」
 あたるの唇からその言葉が放たれた途端、頭の中でなにかの枷がかちりと外れた。
 どく、どく、と身体の奥が脈打っている。頭の中でチカチカと星が瞬いては消える。
 何かが来る。
 今まで、見えない力で抑え込まれ、絶頂まではたどり着かなかった快感が、際限なく高まっていくのを面堂は感じていた。
「ぁ…あ、くるっ…、すごいのくるっ、やぁああ……♡」
 これが行き着く先が予想できなくて、面堂は怯えた。
「めんどう」
「……ぁ」
 するとあたるが面堂の手の甲に触れて、手のひらを撫で、そっと指を絡める。その間も、どくん、どくん、と身体は強く脈打って、快感がどんどん高まっている。
 面堂は、ぎゅうっとあたるの手を握った。
 もう、イく。
 堰き止められていた快感が、一気に弾ける。
「んやあぁぁぁ〜〜〜……っ♡♡♡」
 こらえきれずに、甘ったるい声がこぼれていってしまう。強烈な快感に耐えかねて身をよじって逃れようとすると、あたるは面堂の手を握ったまま上からぎゅっと抑えてそれを阻止した。
「あっ、あ、うあ゙あぁ〜……♡♡♡」
 逃げることも止めることもできず、面堂は心も身体もその強すぎる快感に飲み込まれていく。あたるは楽しそうに面堂の耳元でささやいた。
「すっげーきもちよさそ。がまんしたかいがあったな?」
「ひう…ッ♡」
 その声すらも気持ちよくて、肩がビクッと大きく跳ねた。
 快感のうねりは、体中の神経にねっとりと巻き付いて、面堂を甘く切ない快楽の海に沈めていく。そしてその快感は、いつまでたっても終わる兆しを見せなかった。
「く、ぁ、とまらな……っな、なんで…っ♡」
 かくかくと震える身体を持て余しながら、面堂はあたるにぎゅっと腕を回して縋り付いた。
「ッひ、う、ぼく、の、からだ、どうなって……♡♡」
「うん、イくのとまらなくて気持ちいいな」
「んんぅ〜〜…♡♡」
 よしよし、と頭を優しく撫でられる。その感触さえ今は苦しいくらいで、ぽろぽろ涙をこぼしながら面堂は何度も何度も波のように体の中に押し寄せる快感に目を瞑って耐え続けた。あたるの手は穏やかに髪を梳き続け、あたるの唇がするっと面堂の頬を滑って涙を舐め取っていく。
 あたるは面堂にそっと口づけた。
「ん…っんむぅ……っ」
 舌を絡めるたびに、くちゅ、ちゅく、と湿ったいやらしい音が漏れていく。その音でさえ快感を煽り、気持ちよくて、どうしようもなかった。身体は依然として絶頂から降りてこられない。切ない感覚がおなかの奥をきゅんきゅんさせて、あたるのものを甘く締め付ける。
「……っふ……ん…♡」
 ペロペロと口の中を舐められて、舌を吸われ、甘く歯を立てられて、舌と舌がこすれあうたびに、絶頂を迎えた瞬間のあの甘くて切ない感覚がぞくぞくと体を支配して、しかもそれは普通の絶頂と違ってずーっと続いたまま消えないのだった。
 本当に、この身体はどうなってしまったのだろう。どこか壊れてしまったのだろうか、もう、快感があふれて止まらない。
「っふ、ん、んんぅッ……、ん〜〜〜っ♡♡♡」
 やがて、腰がまたびくっと跳ねて、終わらない絶頂にさらに絶頂が重なった。頭がおかしくなりそうだった。かくかくと身体をわななかせながら、面堂はあたるにぎゅうっと抱きついていた。
「は……」
 熱い吐息がこぼれ、そっと唇が離れていく。あたるはそのさいに面堂の唇をぺろっと舐めて、面堂の顔を見下ろしてにっと笑った。
「今のおまえ、すっげーえろい顔してる」
「……っ」
「おっと」
 咄嗟に腕で顔を隠そうとしたが、そのまえにあたるが両腕を掴んでシーツの上に縫い止めた。少しもがいたが、弱りきった今の状態ではとても敵いそうになかった。
「や、だ……、見るな……」
「なんで?」
 あたるは手首のあたりを親指の腹でそっと撫でながら、優しい声で問いかけてくる。その声の甘さにまた背筋がぞくぞくとして、おなかの奥が甘く疼いた。
「こんな……ぁ、なさけない、ところ……きみには、ッん、みせたくないから……」
「ふーん?」
 するとあたるは、面堂の体を優しく揺すぶるように腰をゆるく動かし始める。激しく深く突かれるのとはまた違う、とろけるような甘さが腰に広がっていった。
「ぁ、ああ……っ♡ う、あ…♡」
「理性なんか捨てちまえよ、面堂。そんなものあったって、じゃまなだけだろ?」
「だ、だめ……そんなのだめ…っ」
「なんにも考えずに、ただ気持ちよくなればそれでいいではないか」
「うあ、っあ、や、よくない…ッ」
 力なく、しかし頑なに首を振る面堂に、あたるは小さくため息をつく。
「ほんっと強情だよな〜、おまえは……」
 とん、とん、と優しく前立腺をなぶるようにつつかれ、こすられ、熱くて甘い感覚が一定の間隔で腰を溶かしていく。
「っひ、もろぼし…っこれ、だめっ、あたまへんになる…っ」
 そこに先が当たるたびに、ぞわぞわと鳥肌が立って、絶頂の甘く苦しい感覚が背筋を抜けていく。身体はまだおかしくなったままで、何度も何度も突かれるたびにイかされ続けている。
「ぁはぁあ……ッ♡♡ おねがいっ、も、ゆるして…ッ♡」
「だーめ。おまえがもっと素直になるまで、放してやらない」
 あたるはくすっと笑って、面堂の乳首をつまんできゅっとひねった。鋭い快感が、中から生まれる深い快感と溶け合って一つになり、ますます強くなっていく。
「んゃああ…ッ♡ ちくびだめっ、さわらないで……」
 その瞬間、面堂の喉がひくっと引きつる。だめだ。そんなつもりじゃなかったのに、また身体の感度が上がろうとしていると感覚でわかった。
「ぁ、いま上がっちゃだめっ、だめなのに…っ♡」
 だが、面堂がどんなにこらえようとしても、あたるの暗示は容赦なく効果を発揮した。ぞくぞくぞく……と身体の奥から快感がさらに込み上げてくる。
「ぁあああ〜〜…っ♡♡♡」
「ほら、またそ〜やって心にもないこと言うから。懲りないやつだな〜」
「ぅ……っく……♡」
 びく、びく、と太腿が断続的に跳ね上がる。あまりの快感に意識が朦朧としてきたところで、あたるが動きを止めて、面堂の涙をそっとぬぐった。その手にすがるように頬をすり寄せると、あたるは指の腹で頬を優しく撫でてくる。ぐるぐると回る熱に理性は焼き切れはじめていた。
 あたるの指がするりと滑り、首筋を伝って鎖骨へ、そして胸へとたどりつく。そしてあたるは薄く色づいた乳輪をくるりと円を描くようにやさしく撫で回した。 
「ここ……さわられるの気持ちいい?」
 これ以上身体の感度を上げられたくないという一心で面堂は答えた。
「きもちいいっ、ちくびきもちいい、そこさわられるのっだいすき…っ」
 あたるは目を細めて小さく微笑んで、面堂の頭を優しく撫でた。
「そーなんだ。じゃ、どんなふうにさわられるのが好き?」
「えっ……」
 あたるは面堂の耳元に唇を近づけると、女の子を相手にするときと同じ甘い声色でそっとささやいた。
「面堂、ほんとのことおれに教えて」
「うあ…」
 理性は度重なる絶頂に次ぐ絶頂のせいでぐちゃぐちゃにされて、もはや盾としての機能を失っていた。だからあたるの甘い声も、面堂の胸に直接届いて、蜂蜜みたいにとろとろと甘く甘く溶かしていく。
 面堂は、身体を満たす欲のままに答えた。
「ぁ…っ、そ〜やって、すりすりされるの好き……」
 あたるの指先が先端をすりすりとさすっていく。そして、その指はきゅっと輪を描いて閉じる。びくっと面堂の身体が小さく跳ねた。
「あっあ、やさしくつままれるのも大好き…っ」
 きゅ、きゅ、と指先が優しくそこを何度もつまむ。そのまま軽く指先をこすり合わせるようにして転がされ、面堂はぞくぞくと身体を震えさせた。
 これも、本当に気持ちいい。それでも、まだ足りないのだ。
「ん…、でも、いちばん好きなの、は…」
 面堂は、潤んだ瞳であたるを見上げ、あたるの指に触れた。
「ぎゅーってつままれてから、さきっぽに爪立ててぐりぐりされたら……っん、きもちよすぎて、すぐイッちゃう…♡」
「ぐりぐりされたい? 今も……」
「あ、ぁ……♡♡」
 つんつん、と爪の先が先端に触れる。それが食い込むところを想像して、繋がっているところがひくひくと震えた。
「してほしい……、ぐりぐり、って、乳首、きみの手で、痛いくらいにして…、そしたら…あたま真っ白になって、イっちゃうから…っ♡」
 面堂は、息を乱しながら懸命に訴えた。あたるは面堂の唇に軽くキスを落としてから、両方の乳首をそれぞれ指先でなぞるように触る。その感触に、胸が期待でどきどきと高鳴り、ぞくっと背筋に震えが走った。指先が輪を描き、あたるは中指と親指で乳首を軽くつまんだ。やわやわと力が込められるたびに、乳首は甘い刺激を喜んで、ぞくっぞくっと快感を生み出していく。だが今欲しいのはこんな生ぬるい快感ではないのだ。
「んっ……ん、んう……♡」
 面堂はたまらず、胸を突き出すように背筋をのけぞらせる。あたるはくすっと笑った。
「えっちなことしちゃって。そんなにはやくイきたい?」
「ん、イきたい…♡」
 おなかの奥がきゅんきゅんと切なくて、繋がっているところはひくひくとしきりにあたるを締め付けている。
 なのにあたるはなかなか面堂の望む刺激を与えてはくれなかった。爪の先でつんつんとつつき、時折爪でくりくりと優しく乳首を回すように動かすが、けっして強い力ではそこを弄り回さない。
「もろぼしっ、いじわるしないで、はやく…っ」
「まぁまぁ。も〜すこし、な?」
「っふ、んうぅ〜……っ♡」
 かり、かり、と硬い爪の先がやわらかな先端をかするたびに、なんとも言い難い感覚がぞくりとおなかの奥に走る。
 もう、どうしても我慢できない。
「もろぼし……たのむから……」
 面堂は、するっとあたるの首に腕を回して、とろけた瞳であたるを熱っぽく見つめる。
「おねがい、イかせて…♡」
 その瞬間、中に収まっているあたるのものが、ひくっ、と震える。面堂はたまらず目を閉じて「んっ…」と小さく声をこぼした。体内を巡る苦しいほどの熱が、あたるを感じて更にぞくぞくと高まっていく。
「はぁ……面堂…」
「んッ、んん……」
「いまの、もう一回言って」
 あたるが、欲に濡れた熱っぽい声と目つきで、甘くささやく。そんなことをされて、逆らえるわけがなかった。
 あたるの指が面堂の唇をなぞる。その感触にどきどきしながら、面堂はまたあたるを見上げて口を開いた。
「おねがい、諸星……イかせて」
「もう一回」
「諸星っ、おねがいだからっはやく、イかせてくれっ…!」
 もどかしさにじわりと涙が浮かぶ。あたるは、はぁー……と長く息を吐いて目を閉じてから、面堂の目尻に浮かんだ涙を優しく拭った。
「いいよ、イかせてやるから……」
 あたるの指がするりと乳首に伸びて、そこを撫でた。待ちかねた感覚に、びく、と腰が跳ねる。
「あ…っ」
「おまえがきもちよくなってイくとこ、ぜんぶ見せて」
 あたるの指が、爪先が、ぎゅうっと乳首に食い込む。そしてぐりぐりと強くえぐられた瞬間、寒気にも似た快感が胸を舐め、全身に広がり、頭が一気に真っ白になる。
 やっと、イける。
「ぅああ〜〜〜…ッ♡♡♡」
 面堂はがくがくと身体を震わせて絶頂に達した。鈴口がぱくぱくと開閉を繰り返すたびに、白濁色の粘ついた液がとろっとこぼれて竿を伝っていく。
「あ♡ あ……♡♡」
「あ〜、甘出しになっちゃったな。そんなに気持ちよかった?」
「ん、ぅあ……♡」
 あたるの指先が、とろとろとこぼれた白い液体をすくって、先端に円を描くようにぬるぬる擦っていく。以前からときどきこうして甘出しになることはあったが、あたるが面堂に「何でも言うことを聞く」という約束を実行させた日にさんざんこのやり方で弄ばれて以来、面堂のカラダはすっかりこの甘出しの甘い味を覚えてしまった。
 勢いのない射精――甘出しは強い快感こそ生み出さないが、甘く心をとろかすような快感が、際限なくいつまでも続いた。
「面堂……」
「ぁ……♡」
 その声で名前を呼ばないでほしい、と面堂は思った。あたるの声が、快楽を司る神経に甘く絡んで、からだがぞくぞくしてたまらない。
「おれもそろそろ、きもちよくなりたい。いい?」
 あたるが面堂の脚をぐっと掴んで体重をかけてくる。それだけで頭がクラクラして、その先がどうしようもなく欲しくてほしくて仕方なかった。
 気持ちいい、もっと気持ちよくなりたい、それ以外のことはみんな熱でとろけて消えてしまった。
「諸星……、一番奥の、あのきもちいいところ、入ってきて…、ぼくをぐちゃぐちゃにしてくれ…」
 あたるは目を瞠って何も言わずに面堂を見下ろす。それからふっと微笑んで、面堂の額にキスを落とした。
「おまえからおねだりするなんてな」
「っ、い〜から、言うとおりにしろっ……」
 面堂は涙目であたるを睨みつける。あたるはふっと笑って、ぐぐ……と腰をさらに奥に進めはじめた。あたるのものに深く体を穿たれ、びく、と身体が跳ねる。
「あ…っ」
「いたい?」
 少し動きを止めて、あたるが尋ねる。面堂は首を振った。
「まだ……」
「ん、いたいときはちゃんと言えよ?」
 うん、と小さく頷いて、面堂はあたるの背中に手を回す。身体の奥深く、本来ならいたずらに触ってはいけないところなのだというのはわかっている、だから普段は面堂もおいそれと触れることを許さずに来ていた。でも今日はもう何もかもどうでも良かった、身体中が甘くて、気持ちよくて、それでももっと気持ちよくなりたくて、ただあたるを全身で感じていたかった。
 あたるのものが少しずつ奥に滑っていく。あたるが面堂の脚をつかみ、更に奥へと進むためにぐぐっと体重をかけた。
「んぐっ……んんぅ〜〜…♡♡」
 ずぷぷぷ……と奥へ奥へとあたるが入ってくる。面堂はその快感にぞくぞくしながら、その先を待つ。
 やがて、とん、と先が当たった。
「ふあぁ……ッ♡♡」
 びくっと大きく腰が跳ねる。ついに来た。奥の奥、本当ならあたるを入れてはいけない場所。でも、信じられないくらい気持ちよくなれる場所。期待と不安で胸がどきどきして苦しい。
「いたくない……よな?」
「うあ…っ♡ あ♡ あぁ〜〜…♡♡♡」
 とん、とん、と優しくノックをするように、あたるはそこを突いてくる。そのたびに腰がビクッビクッと跳ねて、電流が抜けるように深い快感が身体を駆け巡る。
「あっ…、あ、や、これ、やば、い……ッ♡♡」
 面堂はぎゅうっとあたるにすがりついて、その快感に身体を震わせた。普通のセックスのときでもここは本当に気持ちいいのに、今日はあたるのせいでカラダの感度が異常に上がっていることを面堂は忘れていたのだった。
「やっ、諸星…っ、これやばい…ッ♡♡」
 は、は、と獣のような呼気をこぼしながら、頭が真っ白になるような快感に、面堂はすがりつく腕の力を強くする。
「やばいって何が?」
「んんっ、ぁ、わかんない…っでも、なんか、やばい……♡♡♡」
 もう言葉がぜんぜん出てこなくて、でもとにかく気持ちよくて、それをなんとかあたるに伝えたくても、頭の中でチカチカ瞬く星が邪魔をして何も言えない。
 あたるがさらに腰を進める。ぐい、とそこを強めに押された瞬間、びくんと面堂はのけぞった。
「っひ、ぁあああ……ッ♡♡」
「これもやばい?」
 くすっと笑ってあたるが言う。それに対してなにか言わなければいけないのに、もうわけがわからなくなってきて、面堂にはただこくこくと頷くことしかできなかった。
「そろそろ、はいるぞ……」
「あ、ぁ……ッ♡♡」
 ぐ、ぐ、と押す力が強くなってくる。そのたびに瞼の裏でぱちぱちと火花が弾ける。あたるがそこに入ってくる。そうしたら、もっともっと気持ちよくなる。だが、これ以上気持ちよくさせられて正気でいられるだろうか。面堂は不意に怖くなった。
「諸星…っ」
 それが声に出たのだろう、面堂が呼びかけると、あたるはちょっと止まって面堂を見下ろした。
「面堂」
 あたるは小さく微笑んで、面堂の腕をするりと撫で上げる。そして手首に触れ、手のひらを撫で、指をなぞると、ゆっくりと指を絡めた。
「だいじょーぶ。こわくないって」
「だが……っ」
「おれがおまえに嘘ついたことあったか?」
 へらっとあたるが暢気な顔で笑う。あたるが嘘をついたことなんて、それこそ山ほどあるのはわかっていた。くだらないうそ、しょうもないうそに何度怒ってきたか、正直言って思い出せないくらいだ。
 なのに、なぜだろう。ほっとして、涙が出そうなほどの安心感が面堂の身体を包んだ。
 面堂はぐっとあたるの指を握り返す。
「じゃあ、いくぞ?」
「ん……」
 面堂が頷くと、あたるは面堂の唇にキスを落とした。そして再びあたるが面堂にのしかかるのと同時に、ぐぐぐ……とそこに力がかかる。頭がおかしくなりそうなほどの興奮と期待と不安が、血液と共にどくどくと面堂の体中を巡っていく。
 ぐぷ、とあたるがそこに入り込んだ。
「うああ゙ぁ〜〜〜っ!!♡♡♡」
 ビクンと面堂の全身が跳ねる。電流を流されたような衝撃と快感が体の奥で弾け、頭が真っ白になった。面堂の陰茎がピクピクと震え、再び先端がパクパクと開いてとろとろと白い液体が涙のようにこぼれていく。
「あ♡ あ…♡」
「っあ〜〜……、これ、きもちいい、やっぱり」
 ふるっと肩を震わせて、興奮を隠さない声であたるが呟く。面堂は脚をガクガクさせながら、いまだ抜けない深い衝撃と快感に身悶えていた。
「面堂……きもちいい?」
 面堂はコクコクと頷く。言葉にする余裕はまだなかった。
 あたるは甘えるように面堂の頬に自分の頬をすり寄せる。
「わるい、めんどう、おれ、もう、がまんできそうにない」
「え……」
 あたるはゆっくりと面堂の脚に手をかけ、太ももを掴む。面堂を静かに見下ろすその目は、どこか飢えた獣のような光を宿していた。
「もろぼ、し……っ」
「おまえのこと、ぐちゃぐちゃにして、いいんだよな」
 それになにか答える前に、あたるがそこにはまり込んだままゆっくり円を描くように腰を動かし始める。それが気が遠くなりそうなほど気持ちよくてたまらず、面堂はのけぞった。
「ッあ、あぁあ…!!♡♡」
「は…、面堂……」
 あたるがそっと手を伸ばし、面堂のおなかに触れて軽くそこを押した。びくん、と面堂の腰が跳ねる。
「ひぃ…ッ♡♡」
「わかる……? ここの、奥、ずっぽり嵌まってる……」
 すり、すり、と、あたるの手のひらがゆっくりとおなかを這い回る。ぞわぞわするような快感が背筋をつたい、面堂は身をよじった。
「ッあ、もろぼしっ…それだめっ…♡」
「なんで? きもちいいんだろ?」
 あたるは笑って、手でお腹を押し込みながら、ググーッと奥に突き上げる。外からも中からもグイグイ押されて、面堂は思わず口元を両手で覆った。身体が一気に絶頂まで上り詰めていく。
「っぐ、んぅ〜〜〜っ!!♡♡♡」
「んっ……」
 あまりの快感にガクガクと脚が震える。フーッフーッと荒く息をしながら、面堂は深い絶頂と頭でパチパチと弾ける星のせいで遠のきそうになる意識を必死に繋ぎ止めていた。
「はぁ……、ハメたままおまえがイくと、ナカがビクビク〜って締まってめちゃくちゃ気持ちいい……」
 あたるはふるっと小さく肩を震わせてから、また面堂のおなかに手を添える。
「くあ…ッ♡♡」
「面堂、いまの、もう一回やりたい……」
「えっ……」
 いまのを、もう一回?
 面堂はかくかくと震えて力の入らない腕を必死に伸ばして止めようとする。
「やだっ……もう一回なんて、ぜったいむり…!」
「おねがい、どーしてもやりたい」
 甘えるような熱っぽい声であたるは言い、すりすりと宥めるように下腹部を撫でた。ぞくぞく、と背筋が震える。
「やだやだやだっ……♡ あんなのまたされたら、こ、こわれちゃう……っ♡♡」
 今の状態では、あたるの手を引き剥がすことなどとてもできそうにない。だから面堂は今度は腰を逃がそうとシーツに手をついたが、先に気がついたあたるに体重をかけられて阻止されてしまう。
 それでも面堂は泣きながらあたるに訴えた。
「もろぼしっ、もうむりだから…!」
「ぐちゃぐちゃにしていいって、先に言ったのはおまえだぞ、面堂」
「ひあぁ……ッ♡♡」
 再びおなかの上から身体の奥を押さえ込まれて、面堂は口元を手で覆う。こうなったら、もう声を抑えるくらいしかできることはない。
 あたるはまた外と中から敏感なそこを深く深く突き上げた。
「んぐッ、っふ、ん〜〜〜…ッ!!♡♡♡」
「っあ〜〜、さいっこう…ッ」
 ぞくぞく、とあたるが身体を震わせて、少し乱暴に面堂の顔の横に手をついた。面堂は、ぽろっと涙をこぼしながら、ガクガクと絶頂に身体を震わせることしかできなかった。きもちいい、きもちよすぎる、あたまがへんになってしまう、こんなことを繰り返されたらほんとうに壊れてしまう。
「だめだ、もう、とめらんない、かも」
 切なげに呟いて、あたるが今度は腰を揺らし始める。そこに嵌めたまま、ぬち、ぬち、と肉と肉がこすれて、信じられないくらいの快感を生み出し始めた。
「うあっあ、あ、もろぼし、まだ動くなあ…っ♡♡」
「めんどう……」
「ひ、まだイってる、のに…ッ♡♡」
 浅いストロークは徐々に深くなり、ぬぷぬぷと肉襞があたるに引きずられて動き始める。
「うあぁぁ、だめ、これ、イく……♡♡」
 ぞくぞくぞく……と快感にのけぞっても、あたるの動きが止まらないせいで絶頂も途切れることがなくて、面堂は気が狂いそうなほどの快感に苛まれ続けた。
 そして、あたるの前後の動きがある一定の強さに到達したとき、くぽ、とあたるがそこから抜け出た。
「あっ…」
「〜〜〜〜〜ッ!!♡♡♡」
 びくん、と全身をこわばらせ、面堂は深い深い絶頂に達した。びゅる、と白い液体が面堂の性器から飛び出し、面堂の腹とあたるの腹にかかる。
「はぁ〜〜、やっば……」
 ぞくぞくと身を震わせてあたるが感極まったように一言こぼす。そして間を置かずに再びそこに入り込もうと腰をぐりぐりと押し付けてくる。
「ひッ、も、もろぼし…っ♡」
「おまえのなか、よすぎ…」
 もうあたるは目の前の快楽に夢中になっていた。ふだんなら面堂の様子を見て、「すこしやすむ?」「まだいける?」などと尋ねてくるような状態だったのに、面堂の身体を半ば無理やり押さえつけながら、何も言わずにぐりぐりと自身をねじ込もうと力を入れる。
「んゃああ…ッ♡♡」
 そして面堂が身悶えるなか、それは、ぐぽ、と再び嵌まり込んだ。
「くあぁあ〜……ッ♡♡♡」
「うあ…、きもちい……」
 くっと眉を寄せ、あたるは少し耐えるようにぎゅっとシーツを握りしめる。少しそうしてから、あたるはまた腰を動かし始めた。
「この、吸い付く感じ……、っん、ほんと、たまんない……」 
「ぁあ゙〜〜っ♡ あぁ〜〜〜ッ♡♡」
「抜くとき、ちゅーって、キスするみたいに吸い付いてきて……、ほんと、やばい……っ」
 ぬぷ、くぽ、ぬぽ、と何度も何度も結腸を出たり入ったりされて、ビリビリするような衝撃と快感が神経を電流のように流れていく。
「やだっ、もろぼし…っ、もろぼし、も、ゆるして、こわれちゃう……ッ♡♡」
「だめだ、おれも、きもちよすぎて、腰止まらない…ッ」
「んああぁぁ…っ♡♡♡」
 あたるは容赦なく力強い突きで面堂のなかを犯し続ける。自身の肉欲だけを追い求めるその動きに、面堂への気遣いはもうまったく消え失せていた。
 ぐちぐちと結腸の中と外を行き来しながら、あたるは切なげに囁いた。
「あ……、面堂、めん、どう…、だめ、もう、イきそ…」
「あっあ、もろぼし、諸星…っ」
 面堂は必死になってあたるにぎゅっと抱きついた。あたるも面堂の背に腕を回し、ぎゅっと力を込める。
「ッあ、面堂、イく……、これ、イく、イっちゃう…っ、あ、面堂っ、イく…ッ!」
 その瞬間、今までで一番強く深くあたるのものが面堂のなかを貫いた。
「んん〜〜〜…ッ♡♡」
 どくんどくんとあたるのものが中で脈打つ感覚に、気が遠くなるほどの興奮を覚えて面堂は甘い甘い絶頂を味わう。あたるが面堂のナカでイった、面堂のナカで気持ちよくなってイってしまった、その事実が背徳的なまでの快楽を呼び起こして体中の神経を支配する。あたるのものはまだ力強く脈打って、精液をびゅくびゅくと吐き出し続けている。ゴムがなければよかったのに、と面堂は熱に浮かされた頭でぼんやりと思う。そうしたら、この熱と肉欲を体で直接感じられたのに。
 どのくらいそうしていただろう、しばらくしてようやくあたるが欲を吐き出し終わると、ずるりと中から抜け出ていく。
「ん…ッ」
 今までずっと中にあたるの存在を感じていたから、その熱が消えるといつも小さな喪失感を覚えた。とはいえ、理由もなくずっとつながっているわけにもいかない。
 あたるは息を吐きながらゴムを自身から取り外し、口を手早く縛り上げると、ゴミ箱に向かって投げる。そして一通り済むと面堂の上にぱたっと身を横たえた。
「はぁ……はぁ……」
 荒い息が胸にかかって少しくすぐったかった。汗ばんだ肌と肌が触れ合う感覚。あたるはそのまま面堂に腕を回してぎゅっと抱き着いた。
「あ〜……めちゃくちゃきもちよかったな〜……」
 抱きついたまま、あたるが満足げな声で言う。あれだけ好き放題したのだから、満足して当たり前というところかもしれないが。
「きさまは、」
 加減というものを知らんのか、とイヤミを言おうとしてぴたっと止まる。声がかすれている。自分でも驚いて喉を押さえていると、あたるがぱっと身を起こした。
「水とってくる?」
「……」
 喋らずに小さくうなずくと、あたるはひょいっとベッドから降り、絨毯の上をぺたぺたとはだしで歩いて面堂の部屋の中のキッチンへと向かっていく。
 その背中を見ながら、面堂はベッドの上で横になった。面堂は人並み以上に体力がある方だと自負しているが、今日のセックスはそんな面堂でも声が枯れるし芯から疲れ果てるほどだった。おまけに今日はもとから寝不足で、あたるが来る前から眠くて仕方なかったのだ。
 キッチンエリアにたどり着いたあたるがかがんでミネラルウォーターを取り出しているのが遠くに見えたが、そのころには面堂はウトウトし始めていた。面堂は目を閉じる。あたるが水を持ってくるのを待たないと、と心の片隅で考えたが、それに従う前に面堂はとろとろと眠りの世界に入っていった。